傷だらけの僕等
「お前が話せるようになったら全部問いただしてやるよ。
だから『怪我が治る』までじゃなくて、『話せるようになる』までここにいろ。いいな?」


彼女は顔を上げて俺に疑問の眼差しを向ける。


「お前は『なんで?』って聞きたいんだろ?
理由は…ない。
でも、これだけは覚えておけ。
お前をどうこうする気はない。」

真っすぐに彼女を見つめた。

「分かったか?
分かったら、消毒するから腕出せ。」


彼女は俺を疑うことを少しは諦めてくれたらしい。
素直に腕を出した。

俺は彼女に触れないように、ピンセットで消毒する。
消毒液をあてる度、少し顔を歪める彼女。
しみたんだな。


「そういう風に素直に顔に出せばいいのに。」

そう言うと彼女はいつもより深く顔を伏せた。


< 52 / 317 >

この作品をシェア

pagetop