傷だらけの僕等
* * *


「ただいま。」

彼女は顔を出さない。
少し不安になる。
何かあったのか?

彼女はソファーで必死になって本を読んでいた。
呼んでる本は…

「初心者でもできる簡単レシピ」
とかいう本だった。

すさまじい集中力だな。
俺の声にも俺がドアを開けた音にも反応しないなんて。

俺がリビングに入りスーツを脱ぐとようやく俺の気配を察知したようだ。

目がきょとんとしている。


『気付かなかった。』

「だろうな。」

結構分厚い本なのに半分以上読み終わったらしい。

「すごい集中力だな。」

『暇だから。』

「そっか。」


ん…?

キッチンのほうからいいにおいがする。

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