傷だらけの僕等
彼女ははっと我に返って周りを見渡し、すぐさま立ち上がって出て行こうとする。


「待て!!そんなに熱があるのに、ここを出てどこにいくんだよ!?」


俺は彼女の腕を掴んだ。
そんなにきつく掴んだつもりもなかったけれど、さっきよりもずっと体をびくつかせた。
そして俺の腕を振り払おうともがく彼女。

しかし、彼女の体は限界だったようでふらふらと俺に倒れ掛かってきた。


「ほらな…だからそう言ったのに。」


俺は彼女をお姫様だっこした。
力が入ったままの体。
その力は全然弱まる気配がない。

彼女の顔を覗き込むと、冷たい瞳が目に入る。
ただ体を強張らせ、遠くを見つめ、彼女は何も言わない。




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