kiss me Again
でも……
「ごめん。あたし今日大輔とデートなんだ。」
そう言って
あたしはヘルメットの止め金を外す。
「ごめんね。もう、こうやって待ち伏せしたりしないで。」
ダメなんだよ。
「迷惑なの。」
あたしは、大輔を
香苗を、裏切れない。
バイクにヘルメットを置いたあたしは
そうくんを通り過ぎて携帯を取り出した。
時間は10時52分。
どんなに急いでも
もう間に合わない。
完全に遅刻だ。
あたしは発信履歴に手をかけて携帯を耳に押し当てた。
その時――…
力強い腕に吸い込まれて
あたしの携帯が道路に落ち、その拍子に電池パックが飛び出してしまった。
「会いたかった。
海音ちゃんに。
会いたくて―――…」
残酷な程
愛しい声。