kiss me Again


揺れる季節に


揺れる心。




波打ち際の防波堤に
長い影が伸びて


地平線の向こうに
涙を隠した。




どうして―――



「キス、していい?」


どうしてあたしじゃないのだろう。



「…うん……」


どうしてもっと
早く出会わなかったのだろう。




重なる過去も

紡いだ言葉一つ一つも

抱き締めたその腕も




全てこの波で
一つ残らず綺麗に流して


世界が君に
染まってしまえばいい。







―――…



重なった唇を離すと同時に
あたしの瞳から流れた


一筋の雫。




「ごめ…っ!」

あたしは涙を見られたくなくて
慌てて立ち上がった。




泣いてしまう程


切ないキスだったんだ。





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