kiss me Again


「やっと出て来た。」


小さな街灯の下
そうくんはあたしを見てそう呟いた。



「…ごめんね…。寒かったでしょ。」

春とは言えど
夜はさすがに寒い。



そんな問い掛けに


「海音を待つのは慣れてるよ。」とおどけたそうくん。




その笑顔が
あたしの心を躊躇させるんだ。



「ここじゃ、お母さん達起きちゃうかもしれないから…。」


チラッと家に視線を向けてあたし達は歩き出した。




着いた先は小さな公園。


散ったばかりの桜が
そこら中に点々と落ちている。





「寒い?」


そんなそうくんの言葉にあたしは首を横に振った。



そして
二人で街灯の下にあるベンチに腰を降ろす。


キスをして
手を繋いだあの海は

昨日の事なのに
随分昔のように感じて。


座った間に
一人分の距離が空いていて

まるで
何もなかったいつかのように振り出しに戻った気がした。


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