kiss me Again
香苗は
これ以上好きになれる人居ない。
そう口癖のようにこぼしていた。
だから
別れに直面した時
自分を傷付けてしまったんだ。
「…すごく、好きだと思う…。今でも好きだって言ってた。」
「じゃあそうゆう事だ。」
「え?」
浦吉はカーテンを開けて簡潔に言った。
眩しい光に
あたしは目を細める。
「田村はおそらく、その彼に出会うまで本気で人を好きになった事なかったんだろう。」
窓の縁に腰を掛けた浦吉が
振り返ってあたしを見下ろした。
「田村が本気で好きになった相手だからこそ、俺はお前がその彼に惹かれたんだと思うな。」
浦吉の口から
答えが紡ぎ出される。
「沖村は、どこかで田村の事羨ましかったんじゃないか?
本気で人を好きになる事が出来た田村をね。」