kiss me Again



「妊娠7周目ですね。」


白衣を着た
優しそうなおばあさんがカルテに目を通す。

薬品の匂いが
どこか落ち着かなくてあたしは俯いていた。



「また来週にでも、親御さんといらして下さい。」

「…わかりました。」




お母さんと別れ
あたしは病院へと足を運んだ。


そう、ここは
産婦人科。




風邪や病気なんて滅多にしないあたしには
病院の空気がどうも苦手だった。




診察室を出ると
明らかに服装の違うあたしに
周りの妊婦さん達が視線を向けて来る。





「沖村さん。これ、診察券ね。来週は火曜日に来られるかしら?」

「大丈夫です。」



診察券を持って
あたしはそそくさと逃げるように病院を出た。



早く
この空気から開放されたい。


< 192 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop