kiss me Again
病院を出た先にある静かな住宅街に
小鳥のさえずりが響く。
少しだけ寒い春の風は
どことなくあたしを切なくさせる。
そう言えば
あたしがそうくんを好きになった日も
こんな晴れた小春日和だった。
あの時は
まだ、幸せだった。
通じ合える事が
こんなにも苦しいなんて思わなくて。
好き。
確かに彼は
そう言ってくれたのに
あたしは一体何してるのかな。
「バカだな、あたしって…。」
自分の全てを
否定するように呟いた。
気が付けばいつの間にか見慣れた景色が並んでて
自分の家の屋根が見えて来た。
お母さん、泣くだろうなぁ…。
くすんだ赤い屋根を見つめて
ぼんやりとそう思った。