kiss me Again

そんな事
答えてくれる人も居なくて


俺は溜め息混じりに扉から離れた。




その時―――…




ガチャン…ッ!!


香苗のアパートから何かが割れるような音がして
俺の足が止まる。




「…香苗……?」


嫌な予感がした。



そして再び鳴り渡るその音。
俺の不安を掻き立てる。





「香苗!!」


慌てて扉を開け俺が見た先に座り込む香苗は


「……お前…何してんだよ…。」

割れたガラスの破片で手首を切り刻んでいた。



こぼれる涙が
血の滲んだ手首にポタリと落ちる。



血の気が引いた。

香苗は俺から視線を外して再び破片を手首にあてる。



「何してんだよ!止めろって!」


俺は靴のまま慌てて香苗の腕を引く。



足元で
パリンと割れるガラス。



< 259 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop