kiss me Again


それから俺は
自分の家には帰らずに

ほとんどの時間を香苗と一緒に過ごした。




学校は行っていたけど
連絡がある度に早退したり遅刻してた。



一緒に居るって言っても

抱き合う訳でもなく
ただ、同じ時間を共有するだけで。




その間も
相変わらず香苗の母親は帰って来なかった。





そんなある日
香苗の携帯が部屋の隅で鳴り響く。


画面を見た香苗は

「そうちゃん、出て。」

と俺に自分の携帯を差し出してくる。




画面に表示される名前。


「出ないの?」



海音だった。




携帯を持つ手が汗ばんでる。

香苗は微動だにせず
俺を見つめてた。





海音―――…


俺は震える指で
通話ボタンを押した。



「……もしもし。」



愛しい人。


海音を突き放すように。




< 262 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop