kiss me Again
幸せだった。
また、香苗と二人で並んで
この教室で過ごせる。
今まで時間を無駄にして来た分
たくさんの思い出を刻みながら
一日一日を大切にしようと思った。
だけど―――…
「ねぇ、海音。」
香織達とバカ話で盛り上がっていたら
香苗が急に真剣な面持ちで尋ねて来た。
暑さはすっかり和らいで
木枯らしがカサカサと音を立てる。
「そうちゃん、まだ目覚まさないの?」
あたし達の制服も半袖から長袖に変わって。
「……うん…。」
世界が赤く染まる秋が来ても
そうくんはまだ、意識不明のままだった。
「そっか……。」
どんなに学校が楽しくても
あたしの心は
ポッカリと穴が開いたまま。
未だ暗闇から抜け出せないでいる。