kiss me Again
すっかり短くなった日差しに
病室は夕日に染まっていて。
「ごめんね、遅くなっちゃった。」
そう言ってパイプ椅子にカバンを置いたあたしは
「空気、少し入れ替えようね。」
と窓を開けた。
病院の庭は
金木犀のオレンジに彩られて
ほのかな香りがあたしの鼻をくすぐる。
今日もあたしは
そうくんに会いに来た。
だけどそうくんから返事はない。
「傷、すっかり消えたみたいだね。」
昨日まで巻かれていた腕の包帯や
顔にあった傷は綺麗に消えて
まるでただ、眠っているみたいに見えた。
さらっと流れる髪の毛にあたしは手を添える。
固く
閉ざされた瞼は
あれから一度も光を見ていなかった。