ラヴレス








「…、」

愕然と、智純はキアランを見下ろしていた。

怒りで震えていた眼球が、はたりと瞬く。

憎しみが込められた傷付いた目を受け止めることで、自分自身が傷付いていると、自覚していた。

自分の首を絞める小さな手は震えて、感情の高ぶった目からは、今にも涙が滴りそうで。


「―――殺してやりたい」

小さな声で、掠れながら。

キアランを直視出来なくなった智純は、唇を噛み締めて項垂れた。

ただでさえ近距離だった小さな頭が、キアランの胸元へ触れる。


涙を、堪えている。





―――痛い。






「ちす、」

み。

思わず、その頭に手を伸ばそうとした。

自らが追い詰めておきながら、なんて恥知らずな手だろうか。

けれど、キアランの長い指先が届く前に、智純はそこから身を引いた。

仕事で掻いた汗と、土の混じった匂いが、キアランの鼻孔を擽る。


「―――…」

真っ直ぐに立ち上がった智純を見上げ、キアランは息を飲む。

憎しみか怒りか不愉快か。
真っ赤に腫らした目は、冷淡だ。

けれど強いなにかが、見え隠れして、キアランの心臓を殊更に痛め付ける。







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