ラヴレス







「姉ちゃんはずっと俺らの姉ちゃんなんだぞ!姉ちゃんを持っていくな!」

わんわん涙を流し、涎を飛ばして必死に伝えようとしている。

小さな身体は、今、全身全霊でキアランに訴えていた。


連れていかないで。

連れていかないで。

連れていかないで。


―――さみしい。





「…カンタ、」

キアランが思わず、と立ち上がり、カンタに手を伸ばした時だった。

わんわん泣き叫ぶカンタを、智純がふわりと抱き上げる。

ぎゅ、としっかりと抱き締められたカンタは、智純の首にその細い腕を巻き付けた。


「…ぢいねぇえええ」

ガラガラに渇れた声で、智純を離すまいと抱き締め返しているその小さな身体が。


「…バカだね、カンタは」

智純は苦笑して、ゆっくりとカンタの涙でぐしゃぐしゃになった頬に擦り寄った。


「姉ちゃんは、ずっとカンタの姉ちゃんだよ」

智純の目尻にカンタの涙が移り、まるで彼女も泣いているようで。

キアランは、とうとう我慢出来なくなって智純とカンタに近付いた。

それに気付いた智純が、なにをするのかとカンタを庇いながら、キアランを睨み付ける。








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