ラヴレス
「…約束をしよう」
その言葉を、カンタと智純、そして子供達はじっくりと噛み締めた。
今からこの「天使」がなにを言おうというのか。
「君の「ちぃ姉」は、僕が必ず守るから」
この小さな少年に、いつかの自分を見ていたのかもしれない。
純潔たる貴族という立場にある両親の多忙さに、仕事に彼らを取られたような錯覚ばかりを起こして。
「…いつか必ず、ちぃ姉は君達のところに帰ってくる。だから、それまでは君達の代わりに、ちぃ姉を僕に守らせてくれないか?」
優しく滲むような声だった。
カンタはぶるぶると震えて、男同士の約束を前に泣くまいと我慢している。
智純は、歯が浮くような台詞を平気で吐くキアランに呆れていた。
多少のときめきがなかったとは言い切れないが、所詮は子供との口約束の為だ。
本気なわけもない。
「や、約束だ!」
カンタが智純に抱かれたまま、小指を差し出した。
キアランは一瞬きょとんと目を丸くし、やがて花が綻ぶように、雲の隙間から太陽が顔を出したかのように、心底から笑った。
「あぁ、約束だ」
キアランがカンタの小さな小指に小指を絡めると、周りの子供達から歓声が上がった。