ラヴレス
(簡単に考え過ぎていた。叔父上が愛した女性の娘は、言いなりになるような人形じゃない)
若くしてアナベルト・シュナウザーの伯爵領を引き継ぎ、先代が成し遂げた世界でも有数の財産家としての家督を守るキアランにとって、女性はもはや愛すべき生き物ではなくなっている。
パーティーやビジネスの場で、それこそ街灯に引き寄せられる蛾のごとくキアランの財産や家督を狙い、集まってくる女性達。
それを嫌悪しながらも、キアランはそんな環境に慣れきっていた自分に気付いた。
どここかで考えていたのだ。
どうせ叔父上が愛したという女性の娘も――今まで見てきた欲深い人間達と同じだと。
家督や権力、財産を覗き見させてやれば、簡単にイギリスへとついてくるだろう、と。
しかし、智純は違った。
少なくとも、世俗にまみれた欲に固執してはいない。
「…最低だな」
それでも、まだ信じきれていない自分が滑稽だった。
イギリスにある、代々受け継がれてきた邸を見せれば、ころりと態度が変わるかもしれない。
すぐにでも帰る、と今は言っているが、やがて自ら居座ることを始めるかもしれない。
―――なんて醜い。