ラヴレス
だからか、彼女が反論してくると子供の屁理屈のように受け取ってしまい、失礼にも軽く受け流してしまいそうになる―――子供がするそれよりは、的を射ている反論ばかりだが。
「日本の学生には、修学旅行という習慣があるんだろう。…それは近場だったのか?」
飛行機に乗ったことがないという智純に、キアランは純粋な疑問を浮かべてそう口にした。
普段の彼なら、すぐさま気を遣って触れようともしないことを。
智純が同い年とあってか、キアランの緊張はほどけすぎていた。
「……」
主人の失言に、ジンが顔を歪めた。
しかしキアランは、そんな顔をされる謂れをまだ理解していない。
「高校には進学しなかったし、中学の修学旅行は行かなかった」
しかし智純は、ジンが予想するよりもあからさまに、なにより不機嫌になった様子もなくそう答えたのだった。
しかしその態度が、キアランには殊更の衝撃を与えた。
智純の簡潔過ぎる答えは、キアランに自分の失言を理解させるには充分。
―――本来なら、そうして気を遣うことすら失礼に値するのだが。