ラヴレス








キアランはあくまで有名貴族の後継者であり、一般的な教養以外にも様々な教育、躾を施された。

勤勉で優秀だったキアランは大学をスキップしたし、それこそ周囲に居た放蕩貴族より自立が早かった。

教育は、世間一般の子供達が受領するが当然、という環境で育ってきたのだ。

そんな彼が、智純の環境までに気が回らないのは当然といえば当然なのだが――普段なら決してしない失態だった。

貴族出身のキアランとはいえ、世間に疎い馬鹿ではなかった。

なにより今の世の「貴族」など名ばかりで、家計などどこも火の車。
メディアに取り上げられている金持ち貴族など極一部に過ぎない。

そんな「貧乏貴族」から、世界でも屈指の「財団貴族」として成り上がったのはキアランの力である。


―――それなのに。





「…じいさん達が行かせなかったわけじゃないよ。私に行く気がなかっただけ」

微妙な空気に陥った車内に自分の回答が悪かったかと、智純は老夫婦を擁護した。







< 134 / 255 >

この作品をシェア

pagetop