ラヴレス
そんな智純を見やり、ジンは仕切り直すように笑う。
智純自身は気にもしていないので、どちらかといえば、キアランの為に。
「そうだ、昨日、町のお店で美味しいジュースを見つけたんですよ」
そう言って差し出された缶は、梅昆布茶だった。
「これはまた渋い…」
智純は可笑しそうに口端を上げ、それを受け取る。
「…なんだ、これは。ジュースにしては、不思議なカラーだな」
キアランは緑色の小さな缶を受け取ると、見たこともないそれに訝しげな顔を浮かべた。
「ジュースじゃない。お茶。ティー」
キアランの問いに智純は素っ気なく、しかも馬鹿にしたように答えた。
ジンに対する態度とは随分と違う。
しかし智純の気が少しでも楽になるならそれはそれで良かった。
所詮、自分は智純にとって「害ある者」でしかない。
(馴れ合う必要も仲良くなる必要もない。―――今は)
智純の相手はジンに任せ、キアランは放り出していた仕事に取り組むことにした。