ラヴレス
昼食を済ませ成田空港に着いた頃には、太陽は随分と高くまで昇っていた。
肌寒い冬の空気に暖かな陽気は有難い。
智純は脱いでいたコートを羽織り、ドアを開けようとした。
「…待て、まだだ」
しかしキアランに止められた。
見れば、ジンもキアランも、神妙な顔をして空港の入口を見ている。
ちなみに運転手も、鋭い視線でなにかを警戒しているようだった。
「なに?」
そんな三人に、智純は首を傾げるしかない。
すると、わらわらと後ろについていた車から、SPの数人が降りてきた。
それにぎょ、と智純が目を丸くする。
黒のロングコートにサングラス装備の屈強な外国人男性三人。
映画で見たままの姿に、智純は少しだけ感動した。
「マスコミが来てる」
これはキアラン。
「どこからか情報が洩れましたかね」
運転手。
「…どうします?今回はチフミ様がいらっしゃいますが」
は、ジンの言葉だ。
国際便の入口から一番遠い駐車場に停めてはいるものの、こうもわらわらとSPが出てきては全く意味がないのではないか。