ラヴレス
智純は眉を垂らして、心底から呆れた。
「…なんか知らないけど、私、先に行っとく。私の顔まではバレてないでしょ」
見れば屈強なSP三人がキアラン達の乗る車に張り付いている。
これじゃあ見つけてくださいと言わんばかりだ。
「それも断言できない。何度もホテルの部屋を行き来したからな。とりあえず、非常通路を開けてもらうしかないだろう」
ナニソレ。
智純は心底から面倒になった。
「…非常通路から入ったって、搭乗口は一般と変わらないんじゃないの。意味ないじゃん」
それはキアランとジンにも解っていたが、仕方ない。
今回は自分達だけではなく、智純が居るのだ。
彼女だけは、全国ネットで流させるわけにはいかない。
「気を付けてはいたんだがな」
キアランが苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
人の職場にロールスロイスで乗り込んでおいて「なにに気を付けていた」というのか。
智純はシラケた。
「メンドイ。私先に行っとく」
智純は智純で、自分がネックになっていることくらい解っている。
運転手もジンもSP達もキアランも、自分を庇うために普段通りに行動できないのだと。