ラヴレス
「まだ時間あるよね。ジンさん、鏡ある?化粧させて」
そんな智純の言葉に、キアランは眉を顰めた。
「化粧なんかでどうにかなるか、」
「私、お水でバイトしてた時、ギャルメイクで素顔隠してたから。黙って見てろ」
有無を言わせず黙らされたキアランは、智純の口の悪さに苦虫を百匹ほど噛み潰した顔になった。
「外のマッチョ達、車に乗らせなよ。目立つ」
智純がパタパタと化粧を始めたのを見て、SP達は不思議そうに首を傾げている。
そんなSP達にジンが指示を出し、やっと「普通の状態」になる。
まあ車が車なので、目立つと言えば目立つのだが。
「…よしゃ。じゃあ先に行く」
智純は適当に纏めていた髪を解くと、適当にすいてからコートを羽織った。
数分で出来上がった智純の顔は、まさしく、の顔だった。
「これはまた」
そんな智純を見て、ジンが感嘆する。
キアランは心底から顔を歪ませ、「ケバい」と文句を言った。
そんなキアランを殴った智純は、見事なギャルに変身していた。
誰がどう見ても、「アナベルト・シュナウザー家」が連れているような女性には見えない。