ラヴレス







ざわざわ…。


エスカレーターが終わりに近づくにつれ、マスコミ達もその騒ぎに気付いたらしい。

キアラン達の視線を辿るように、そちらに一斉が注目した。



「ぶつかってきたのはそっちだろ!?どうしてくれるんだよ!あんたのせいだ!」

深くキャップを被った小肥りの男が、智純の迫力に負けず言い返す。

手には壊れたゲーム機が握られていた。


「だからそれは謝ったじゃん!大体、歩きながらPSPしてるほうが悪いわ!下向いてゲームしてたあんたが、わざわざ私が避けたにも関わらずぶつかってきたんだろうが!」

しかし智純も負けてはいない。
子供達に怒る時とは違い、心底からぶちギレている。




「…触らぬ小猿に祟りなし」

小猿とは智純のことだ。

―――キアランは、無視することに決めた。



「…、」

智純もどうやらキアランに気付いたようだったが、数人のマスコミの姿も認め、ここは他人のフリをしていたほうがいい、と踏んだらしい。

男に言い返しながら、ちら、と視線を投げただけでコンタクトは取ろうとしなかった。








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