ラヴレス
「うるさいうるさいうるさい!あんたが壊したんだから弁償しろ!このPSPは限定もので、俺の宝物なんだぞ!」
小肥りの男は見た目は三十代半ば、口にしてる言葉は小学生並みだ。
あまりにも情けない。
「宝物だったら大事にしまってろこのカス!」
あぁ、なんて口が悪いんだ―――キアランは不愉快極まりなかった。
貞淑で優しいイトコならば、どれだけ怒ったとしてもこんな下品な言葉は吐かないだろうに。
「キアラン、いいのですか?」
明らかにスルーをしようというキアランに気付いたジンが耳打ちする。
「いい。放っておけ」
智純も子供ではない。
ましてやあのような男相手に負けるわけもない。
幸い、マスコミ連中はそちらのほうにも気を取られ、いい感じに自由になった。
(とんだトラブルメーカーだ)
呆れきったキアランが智純の横を通り過ぎようとした―――その時だった。
「この…っバカ女!」
ギャルメイクをした若い女性にカス呼ばわりされた小肥りの男性は逆上した。
ヒュッ…。
智純の背後をキアランが通り過ぎようとするその時、智純に向かってひしゃげたPSPを投げつけたのだった。