ラヴレス
ガシャンッ…。
しかし方向違いに投げられたそれは、智純を通り過ぎ、キアランへと着地点を定めていた――のだが。
「いった…」
何故か呻いたのは智純だった。
見当違いのゲーム機の行く先にキアランが居たからだ。
とばっちりを食らわすわけにはいかない、と前に出たのは良かったが、受け止める前にひしゃげたプラスチックの先が瞼に突き刺さった。
とは言っても、大した傷ではない。
壊れたゲーム機はぷすりと瞼に刺さってすぐ床に落下したからだ。
その瞬間を見ていたキアランが目を丸くする。
わざわざ庇うこともない。
あんなひょろりと投げられたゲーム機なんて痛くも痒くもないからだ。
智純が自分を庇ったことに、純粋に驚いていた。
「…弁償しろ!ばか女!」
智純が痛そうに片目を閉じていても良心は傷まないらしい。
小肥りの男は尚もぎゃんぎゃんと喚き立てた。
そんな男に智純は、はあ?と不機嫌そうに唸り声を上げた。
今にも殴りかからんばかりの智純を、マスコミや野次馬が見守っている。
「…セキュリティは?」
しかしその空間に、凜とした日本語が響き渡った。