ラヴレス






それは違うことなきキアランの声で、智純はぎょっとする。

慌てて後ろを振り向き、涼しげにこちらを見ているシルバーブロンドの長身を睨み付けた。



『なに人のケンカに口出してんの?さっさ行けよ、オマエ赤の他人だろ』

とその目は物語っている。
そんな智純をキアランは冷ややかな半眼で見返した。

『そうだな赤の他人。問題なく飛行機に乗り込める筈が、赤の他人の君のせいでとんだ迷惑だ』

とその目は語る。

智純が腹立たしげにひくりと鼻の穴を広げた。



「女性に物を投げるなんてなんて最低な男だ。セキュリティはなにをしてる?」

そんな智純にふ、と勝利の吐息を吐き、次にキアランはそう続けた。
その言葉に、マスコミがわたわたとざわめき始める。

やがて青い制服を着た整備員達が人混みの向こうから向かってくるのが見えた。



「―――それから君、私の秘書に手当をさせよう」

キアランはそう言うと、智純を「初対面の女性」を相手取るように恭しく彼女の手を取った。

今にも叩き落としてやりたい衝動を抑え、智純はひきつった笑みを浮かべている。








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