ラヴレス
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ホテルから出てすぐに見える国道にかかる歩道橋を渡り、個人経営の店が並ぶ通りを物珍しげに歩いた。
部下が用意した「私服」とはいえ、やはりシルバーブロンドは目立つらしく、視線をジリジリと感じながらきついカーブを描くツバ付きのキャップを深く被り直した。
そのまま軒並みの路地に入り、石畳で出来た階段をゆっくりと上がってゆく。
両端を民家の塀に囲まれた狭い道端には、白梅が鮮やかに盛っていて、その根本には春を待ちわびるたんぽぽの緑が群れを成している。
道が開けると、住宅街に出た。
日本ではガーデニングにあまり力を入れないらしく、打ち放したコンクリートの駐車場は、色気も遊び心もなにもない。
犬に吠えられて、そこから左に数歩行ったところに小さな公園を見つけた。
平日ということもあり、人っ子ひとりいやしない。
高いフェンスが張り巡らされている境から下は草木が覆い繁る崖になっていた。
ベンチに腰掛け、そこから見える、道々を行き交う人々、車、見慣れぬ町並みをぼんやりと見渡すことにした。