ラヴレス
「…ダイジョブ?」
いつの間に覚えたのか、智純に付き添うことになったエスピーの大男が覗き込んでいた。
サングラスを外した大男は意外にもキュートな瞳で智純を心配そうに見ている。
それが可笑しくて、智純は小さくダイジョブ、と返したのだった。
ブルル…。
ポケットにしまっていた携帯電話が震えた。
日本製とは違う「02(英国でいうNTTdocomo)」とロゴが書かれたそれを手に取る。
『…ハロー、チフミ様ですか?』
ジンだった。
母国に着いたからか、日本語のアクセントが少しおかしくなっている。
『今から我々は外に出ます。チフミ様には別のお車をご用意させましたので、お付きのエスピーとどうぞ』
わらわらとパパラッチ達に流されるようにしてロビーの出口へと向かうキアラン一行。
人混みのなかから、ジンが小さくウィンクした。
「解りました。そうします」
通話を切ると、智純はエスピーを見上げた。
彼は全て解っているらしく、にこにことエスピーらしくない笑みを浮かべ――演技だろうか――智純を外へ誘導した。