ラヴレス
しかもキアランは一般人ではないし、キアランの叔父に当たる人物も貴族の称号を持つ者なのだろう。
そんな人物が、遥か昔に決別してしまった恋人の娘を呼びつけたとなれば―――。
(…こりゃ厄介者だわ)
セレブのゴシップなんて今の世には溢れ返っているが、「アナベルト・シュナウザー家」は当主の優秀ぶりと旧弊で堅実なしきたりで有名な、今時珍しいクリーンなセレブだ。
しかしもし自分のことがバレれば、そんな彼らのイメージに、智純が傷を付けることになる。
(って待て。私は無理矢理つれてこられたんじゃん)
しかしバレれば、智純からも平穏は奪われるだろう。
下手すれば、日本の「こころの家」にも影響が出る。
(…早く、帰りたい)
何事もなく「天使」と対面して、キアランとジンに早々の別れを告げて、日本へ。
その為なら、あの地獄の飛行機だって我慢できる。