ラヴレス
「はあ?」
しかし智純にしてみれば、なんの脈絡もなく掛けられた攻撃的な言葉に過ぎない。
元々、左官という職業に就いていたこともあり、建築物、エクステリアには興味がある。
日本でただの智純として生きていれば、こんな伝統的な庭や邸、一生見ることもなかっただろう。
智純にしてみれば、素直に褒めてやったというのになんだそれ、である。
「意味わかんないし。女なら誰でも自分に媚び売ると思ってんの?どこのナルシスト?キモイ」
軽蔑を含む半眼で言い返され、キアランはひくりと唇を震わせた。
あからさまな物言いはお互い様だが、先に仕掛けたのはキアランだ。
それもあり、智純に堂々と指摘されて恥ずかしくなる。
言い返す言葉もなく黙って智純を睨み付けていると、にやりとその小さな容貌が笑った。
「…安心しなよ。私は、自意識過剰なあんたにも、莫大なアナベルトの財産にも、興味は、ない」
まるで、出来の悪いこどもにゆっくりと言い聞かせるように。
それは、財産も地位も超えた位置で、ただの「友人」になってやると、傲慢に言い付けている。
智純のにやりに触発されたキアランも、にやりと唇を歪めた。