ラヴレス











三階奥の部屋に通されたため、一階に降りるには長々と歩かなければならないが、見渡す限り、もう二度と拝めないような冷厳な建築内部。

思わず恍惚と眺めながら、ゆっくりとその足を進める。
二階に降り、そのままの流れで一階に降りようとした時だった。





「―――キアラン…!」


渦巻く階段下から、高い女性の声が響いてきた。

発音がよすぎてはっきりとは解らなかったが、恐らくあのボケ野郎を呼んだに違いない。

声の様子からして、若い、愛らしい声の子だ。

(この陰気臭い邸にこんな声の持ち主が居るとは…)

大概失礼な言葉しか出ない。


「フィー!」

しかしその声に答えたキアランも、まさかの喜色を顕にした声だった。

普段のあの気に食わない声色ではなく、年相応の彼らしい、声。

好奇心に駆られ、階段の縁からそっと顔を出す。



「お帰りなさい!」
「ただいま、フィー」

玄関から繋がるゲストルームの中央で、眉目秀麗な男女が抱き合っていた。

まさかのラヴシーン。

長身のキアランに抱き竦められるように抱えられている女性は誰だろうか。








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