ラヴレス
振り向けば、なかなか愛嬌のある顔をした少女が立っていた。
赤いランドセルを背負い、お粗末な白い帽子のせいで解りにくいが、カラフルなボールの付いたヘアゴムで髪の毛をふたつにまとめている。
公園の入口に立つ、小さな背丈。
こちらを真っ直ぐに指差し、じ、と目を皿のようにしてこちらを見ている小さなレディに、キアランは微笑を浮かべることなく話しかけた。
「…コンニチハ」
まさか「天使」が喋るとは思わなかったらしい。
少女はびっくりした顔を浮かべ、そのまま固まってしまった。
キアランはそれでも表情を改めることなく、愛らしいレディに話しかける。
「…いいお天気だね」
とりあえず、セオリーな話題から。
レディはまだ固まっている。
「学校は?」
そう言ったところで、キアランは少女の額に白い大判のシールが貼ってあることに気付いた。
「…それ、なんだい?」
素直に気になったので訊いてみると。
「おかおがね、あついから、はってなさい…、って先生が」
辿々しく話す、要領の得ない言葉。
しかし勘の良いキアランはあぁ、と静かに納得した。