ラヴレス







「…まあ!」

しかし、それに反応したのは誰でもない、今の今までキアランと抱き合っていた女性のほうだった。

キアランからぱっと離れ、足音軽く階段を上がってくる――と思えば、唖然としている智純の手をぎゅ、と握った。

その白魚のような手の柔らかさに、智純はぎょっとする。


「…はじめまして、貴方がチフミさんね!」

そこで初めて目が合った。

「…は、」

透けるようなアイスブルーに射ぬかれて、智純は固まる。
そこに立ち、智純の手を握っていたのは「人形」だった。

唇の幅、厚さ、開き具合、鼻の高さから瞳の大きさ、睫毛の本数すら計算され尽くしたような、美顔。

今まで映画で観てきたどんな女優より、美しくて眩しくて、愛らしい人が、そこに。

けれどまだ幼い。

身長は智純より高いし、顔つきには既に艶やかさがあるが、無邪気な色のほうがずっと強く、智純をキラキラと輝く瞳で覗き込んでいる。



「貴方が来るのを、ずっと楽しみにしていたの!」


しかも日本語。


だれ?






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