ラヴレス








「フィー、智純が困っている」

そして階下で手招きしているキアランは、まるで愛しいものでも見るように目を細め、常より何倍も穏やかな声で囁いた。


(…キモチワルイ顔)

智純は智純で、老若男女誰もが見惚れてしまうようなその造形にすらサブイボを立て、唾を吐きかけたくなる。


「行きましょう!」

しかしそんなことなど露知らない謎の美少女に手を引かれ、あれよあれよという間にゲストルームへと連れて行かれてしまった。


「紅茶を淹れ終えたら呼びに行くつもりだったんだが」

隣に来た智純に、キアランが冷ややかな目を向ける。
勝手に部屋を出たことを言っているらしい。

当然、無視である。



「…チフミ様、お砂糖は?」

ジンがタイミング良く話し掛けてくる。
智純が現れたことで、全員が英語から日本語へとシフトしてたらしい。

その雰囲気がなんだか嫌で、智純はジンの問いにも上の空で答えた。

何より問題なのは、キアランの隣に座り、こちらをニコニコと見つめてくる美少女の存在である。


(居たたまれない)


一般的な日本人顔をそんなに眺めてなにが面白いのだろうか。






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