ラヴレス
ゲストルームに置かれた一番いいソファに向かい合うように座らされた状態で、智純はただ無言のままで居るしかない。
話す話題もなければ、話し掛ける要素もないのだ。
ただじ、とドーム型の天井の細部を眺め、内心で感嘆を漏らすだけ。
いよいよ自分がここに何しにきたのか解らない。
「…キアラン」
智純に紅茶が回ると、美少女がなにかを促すようにキアランの腕をつついた。
あぁ、と優しげな声で答え、キアランは笑う。
(よく緩む…)
そんなキアランを初めて目にした智純は、なんだか別人を見ているような気分になっていた。
そんな智純に、キアランが向き直る。
しかし智純は天井を見上げたまま気付いていない。
口も空いているし、間抜けだ。
パン、とキアランが自分の手を叩いた。
「!」
鳴り響いた音に慌てて顔を向ける智純に、普段より緩やかな笑みを向けて。
「…紹介するよ、彼女はソフィア。ソフィア・ローゼンベルク」
キアランの視線から、美少女へと視線を移す。
ソフィア・ローレンも真っ青の美貌だが、嫌味でなく優しい笑みが智純に向けられた。
「キアランの従妹なの。よろしくね、チフミ」