ラヴレス
ソフィア・ローゼンベルク。
今年で二十歳を迎える、うら若き乙女である。
名門アナベルト・シュナウザー家の親戚に当たるが、貴族ではなく一般家庭の出である。
キアランの叔父と彼女の父親がトリニティカレッジでの同窓生と言うこともあり、親交が深かったのだが、ソフィアがジュニアスクールを卒業する前に両親は交通事故で他界。
キアランと叔父の計らいで、彼女はアナベルトシュナウザー家へと引き取られることになった。
「キアランとは小さい頃から一緒だったから、兄妹のようなものなの」
にこりと笑むその姿はまるで綻ぶ牡丹。
こんな綺麗な生き物が自分と同じ空気を吸っているなんて信じられない。
あんな濃厚なハグをしておいてただの兄妹染みたイトコだということも信じられない。
(…いやまあ欧米…西洋だし。アリっちゃアリかもしれないけど)
「貴方が会いたがっているアラン叔父様も、私にとってはお父様のような方」
頬を染めて照れるように語るソフィアは大変愛らしいのだが、別に智純が会わせてくれと無理に頼んだわけではない。
脅迫されたのだ。