ラヴレス
大切な叔父の恋人。
その恋人の娘。
複雑だ。
叔父であるアランを、実の父親のように慕ってきたから、尚更。
それならばいっそ、実の父親が不倫して出来た子が知純なら、もっと良かった。
母親の違う義兄弟。
それでも血は通っているから、あんな「案」は出なかった筈だ。
(…叔父上、)
どうか早く目覚めて欲しい。
そして「あれ」は、思い詰めた末の戯言だと、笑い飛ばして欲しい。
そうすれば、自分が智純を厭う必要もなくなるのだ。
(…馬鹿馬鹿しい、)
しかしどう考えたところで、所詮、大切なアランが望むままに振る舞うしかない自分が居る。
アランが決定を下せば、それは当然、キアランの意思になるのだ。
なんだかんだと自分で賽も振れないくせに、エゴな幸せばかりを望んでいる。
それも他力本願に。
智純が知れば、激昂するに違いないだろう秘密を腹に抱えたまま、叔父上の謁見に臨もうとしている。
病床にあるアランが、なにを口走るか判ったものではないのに。
「―――ソフィア…」
そして彼女が知れば、僕はどんな想いをするだろう。