ラヴレス
*
宛がわれた部屋の、天蓋付きのベッド。
そこに横になり、高々と天井まで伸びる四柱から垂れる繊細な麻のカーテンを指先で弄ぶ。
揺れては透けるカーテンに、智純はぐ、と唾液を飲み込んだ。
悔しさやら虚しさやら、なにより見知らぬ土地に毛色の違う人間は自分一人なのだという孤独感が、智純の心中を引き絞るように苦しめていた。
(まさかのホームシック…)
キアランに吐き捨てられた軽蔑の籠る言葉より、あの雰囲気に妙な疎外感を感じてしまったのがいけない。
言葉も解らなければ、気を許せる相手も居ない。
(別に、旅行に来たわけじゃないし)
ならばそれでいい筈だ。
そうだというのに、キアラン、ソフィア、ジンのあの和やかな雰囲気に入り込めずに――入りたいとも思わないのだが――妙な感慨に撃たれてしまった。
(母さん…)
早く、「天使」に会いたい。
そして会ったら、すぐにでも日本へ帰りたい。
(じいさん、ばあさん)
まだ一日目だと言うのに情けない。
まだなにも、果たしていないのに。