ラヴレス
「お邪魔しても?」
装飾の美しい扉から覗いたシルクの光沢を持つ金髪。
眼球を焼かれるような白い肌には、シミも黒子も見当たらない。
柔らかな笑みを浮かべ、智純より年下だが身長は高いソフィアが、そこに立っていた。
「…ソフィア、さん」
何故、訪ねてきたのだろうか。
彼女のイトコにあんな真似をしでかした女に、なんの用があって。
見れば、ケーキを二切れ、紅茶ポットとカップを乗せたアンティークのトレイを手にしている。
まさか茶会の仕切り直し。
さすがイギリス。
「貴方が来ると聞いて、今日は朝からケーキを焼いていたの。是非食べて欲しくて」
そう言い、ソフィアは見晴らしのいい窓側へと移動した。
華奢な手足がゆっくりと瀟洒な室内を横切る様は映画のワンシーンのようで、知純はその美貌ぶりに舌を巻く。
決して華美ではなく、グラマーでもないが、まだモノクロの時代のオードリーヘプバーンのような可憐さが、ソフィアを輝かせている。
(…かわいい)
ケーキを口にしながら、智純は向かいに座るソフィアを見た。
夜の仕事をしていた頃は、美しい女性など毎日のように見てきたが。
目の前のソフィアは別格。