ラヴレス
「お口に合うかしら。日本人とは味覚が違うから、とシェフに言われてしまって」
じ、と見ている智純に、ソフィアは花が綻ぶような、けれど控え目な笑みを向けた。
気遣うような、ケーキの味を心配している彼女が愛らしい。
「とても美味しいです。ありがとう」
嘘ではなかった。
やはり日本との味の違いはあるものの、こんな愛らしく美しい彼女が、自分の為に焼いてくれたのだと言う。
不味いわけがない。
「私、貴方より年下だから、ケイゴ?なんて使わないで。それに、ソフィアと呼んで貰って全然構わないわ」
笑みを浮かべた知純にほっとしたのか、ソフィアは先程より力の抜けた笑みを浮かべた。
少しだけ眦が下がり、見る者をとろかしてしまうような。
(キアランが可愛がるのも判る…)
こんな生き物が傍に居て、しかも自分を慕ってくれるなんて。
(贅沢な奴)
「私、一人っ子だからか、ずっとお姉ちゃんが欲しくて。だから貴方がイギリスへ来るって知った時、絶対に仲良くなろうって決めたの!」
無邪気なソフィアに、智純は確かに「後輩」を見るような気分になっていた。
「妹」…にしては彼女は美しすぎる。