ラヴレス
「あんなつまらない言い合いで、別に嫌いになったりしない」
まあもとから好きじゃないし、とは口に出来なかった。
言い切った智純に、ソフィアが奇跡のような笑顔を浮かべたからだ。
「ありがとう、チフミ。私、貴方のこともっと知りたい!」
はしゃぐように智純の手を握ってきたソフィアの手はふわふらと柔らかく、マシュマロのようだ。
無邪気なソフィアに笑みを向けつつ、智純は先程まで抱えていた憂鬱な気分が軽減されていることに気が付いた。
誰かと話せたからか、それともソフィアの雰囲気がそうさせるのか――恐らくどちらもだ。
(まあ彼女がこう言うなら、あのバカを許してやってもいいか…)
はじめから売り言葉に買い言葉だというのはわかっていたし。
頭の片隅でそんなことを考えながら、智純はソフィア手作りのケーキを頬張った。