ラヴレス







「あの後」、一度も部屋を出ることなく仕事に取り組むことになった。

ジンも秘書として部屋にはやってきたが、特に小言を言われることもなく、「知純探し」で溜まっていた仕事を片付けることができたのだが。

給仕が知らせにきた夕食の席で、意外なものを目にするはめになった。




「…ちょっとソフィア、動かないでよ」
「だって擽ったくて…やだわ、笑ってしまう」

夕食が並ぶテーブルには付かず、隣の部屋に置かれたふたり用のソファに座り合うふたり。

ソフィアはきちんと座面に座り、智純はソフィアを股で挟むよう背凭れに腰掛けている。

なんの話をしているのか、ふたりの間に初対面のぎこちなさはない。

自分が仕事に夢中になっている間に、親しくなったらしい。

ソフィアの美しい髪を結いながら、智純は穏やかに笑っていた。



(…機嫌、なおったか)


それに少なからずほっとするも、なんだかソフィアを智純に取られたような気分に見舞われた。






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