ラヴレス








キアランが目にしている空間は明らかに「女の子だけ」のお楽しみの最中で、男の自分が入っていける雰囲気ではない。

ワンピースにカーディガンを羽織ったソフィアと、デニムとラフなパーカーに身を包む智純。

そしてふたりとも楽しそうに笑っているものだから―――。



「…眼福」

隣で、キアランと同じようにそれを眺めていたジンが呟いた。



「キアラン!」

こちらに気付いたソフィアが、嬉しそうに笑みを向けてくる。

その微笑に思わず顔が緩むが、次には智純の視線も感じ、思わず固くなってしまう。

それに気付いた智純が、一瞬だけバカにしたような笑みを向けた――気がした。


「チフミ、夕食にしましょう」

美しい髪を後頭部でゆったりとしたお団子にまとめたソフィアが立ち上がる。

ソフィアに指し出された手を掴み、智純もソファの背凭れから飛び降りた。

智純のほうが身長が低いが、雰囲気から年上だということは解る。

ソフィアは嬉しそうに智純と手を繋ぎ、キアランに挨拶のキスをした。


「お仕事、お疲れ様」

間近でふわりと笑んだソフィアに、キアランは今度こそ破顔した。






< 199 / 255 >

この作品をシェア

pagetop