ラヴレス
「おかあさんとおとうさんは、どこ?」
じ、と真面目な顔で問い掛けてくる「天使」に、少女はぱちぱちと瞬いた。
「天国!」
そして、小さな野花が蕾を綻ばせるように笑う。
キアランは思うところもあり、少女のその穏やかで無頓着な答えに口をつぐんだ。
「でもさみしくないよ。今はじじもばばも一緒だし、ちい姉がおかあさんになってくれたから!おとうさんとおかあさんは天国で幸せに暮らしてるから、泣いちゃだめだよ、ってちい姉が言ってた」
具合は相変わらず良くないようだったが、少女はよく笑った。
「…そう、今はチイネェが、君のお母さんなんだね」
少女の頑張りに答えるべく、キアランも小さく微笑んだ。
燦々と照る陽光は、この小さなレディに相応しい、と心の隅で考えながら。
「…それで君は、今からどこにいくの?」
さすがに体調の良くない子供を放っておくことは出来ない。
家に帰るにせよ、学校に戻るにせよ、送るぐらいはしてやらなければ。
他人に懐きすぎる少女の無防備さに、キアランは心配になっていた。
―――その時だった。
「居た!」