ラヴレス










「おかあさんとおとうさんは、どこ?」

じ、と真面目な顔で問い掛けてくる「天使」に、少女はぱちぱちと瞬いた。



「天国!」

そして、小さな野花が蕾を綻ばせるように笑う。

キアランは思うところもあり、少女のその穏やかで無頓着な答えに口をつぐんだ。


「でもさみしくないよ。今はじじもばばも一緒だし、ちい姉がおかあさんになってくれたから!おとうさんとおかあさんは天国で幸せに暮らしてるから、泣いちゃだめだよ、ってちい姉が言ってた」

具合は相変わらず良くないようだったが、少女はよく笑った。


「…そう、今はチイネェが、君のお母さんなんだね」

少女の頑張りに答えるべく、キアランも小さく微笑んだ。

燦々と照る陽光は、この小さなレディに相応しい、と心の隅で考えながら。




「…それで君は、今からどこにいくの?」

さすがに体調の良くない子供を放っておくことは出来ない。

家に帰るにせよ、学校に戻るにせよ、送るぐらいはしてやらなければ。

他人に懐きすぎる少女の無防備さに、キアランは心配になっていた。




―――その時だった。









「居た!」









< 20 / 255 >

この作品をシェア

pagetop