ラヴレス
しかしソフィアは智純と繋いだ手を離そうとはせず、あまつ食卓の席まで近くに座りたいと言い出す始末。
古くからのしきたり、マナー、そして関係上、長いテーブルの上座にはキアラン、そしてその左右の側面に座るのが、ソフィアと客人の智純。
椅子自体、三人分しか置かれていない。
ソフィアと智純は向かい合う形になるのだが、それが不満らしい。
彼女がこんな我儘を言うのも珍しかった。
強くは言わないが、智純の隣をちらちらと眺めてはしょんぼりしている。
それを智純とふたりで眺めていると、不意に智純が立ち上がった。
なにをするんだ、と見ていると。
「チフミ!?」
自分が座っていた椅子を抱え、向かい側のソフィアの隣へと移動した。
ソフィアは自分で言ったにも関わらず、隣に座ってくれた智純を目を丸くして見ている。
「ちょっと行儀悪いかもしれないけど、まあ一日くらい、いいんじゃないの」
投げやりに言い、唖然としているキアランに視線を向ける。
キアランはなにを言うでもなく、智純の行動に呆気に取られていた。