ラヴレス
「つうか場所あまりすぎだし。こんなでかいテーブルなら、ジンさんも一緒に食べれば」
キアランとソフィアの視線を受けとめ、そこまで言い放った。
この食堂は、この邸宅が建てられた頃より当主が食事をする場所と定められてきた空間だ。
それ故、建築としての作り込みも一層凝っているし、主が命の糧を得る場所として神聖な扱いすら受けているというのに。
しかし、ソフィアは自分の我儘に素直に付き合ってくれる智純に嬉しそうな笑みを向け、そんなソフィアの笑顔を見てはキアランもなにも言えなかった。
そんな三人を端から見ながら、しきたりに重きを置かない実用型の秘書であるジンは、ただにやにやと口許を緩める。
智純が現れたことによって、なんだか一波乱起きるような、そんなよこしまな思いを抱いて。