ラヴレス




*





―――夕食後。

智純はキアランの部屋へと呼び出された。

扉を開ければ、フロア半分を占めるほど広大な部屋が広がる。
美しく年期の入った調度品は、ゆとりある距離でバランスを成し、豪奢なカーテンは重厚で位置が高い。

大きな窓の先には、ベッドひとつ置いても余るだろう大きなテラス。
そこからは広大な敷地を一望できる。

寝室は奥にあるのか、見渡して確認できるのは椅子にテーブル、ソファ、正面に置かれた執務机、…部屋と言うより、執務室と言ったほうが正しいかもしれない。

ただ、先程食事をした居間より瀟洒な彫刻をなされた暖炉が印象的だった。

もしキアランが世界屈指のエリート貴族ではなく経営難貴族だというなら、この邸宅を解放してホテル事業に進出すれば儲かるんじゃなかろうか。

維持費や税金は変わらず係るとしても、なにせ元手がタダだ。

(がっぽり儲かるな…)

などと余計なことを考えている智純を、キアランはソファへと促した。







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