ラヴレス
智純はゆっくりと柔らかなソファへと身を沈め、横手にある暖炉に灯された火を眺めた。
エアコンが普及しているとは言っても、やはり火の温もりはいいものだ。
独りぼっちの心許なさが、じわりと汗を掻く。
「紅茶を」
目の前のテーブルに、香りいい黄金色を湛えているカップが置かれた。
その際、間近で腰を折ったキアランのシルバーブロンドが揺れる。
サラサラと彼の動作に合わせて靡くそれは、綺麗だ。
母が惚れた「アラン叔父さん」も、同じような髪をしているのだろうか。
まだ会うことの出来ない「天使」とキアランを重ねながら、智純は紅茶に口付けた。
そんな智純を他所に、キアランは自分の分のカップを手に、智純の前ではなく執務机へと腰を落ち着けた。
話がある、と呼び出されたというのに、マナーがなっていない。
と、少しばかり腹が立った。
しかし、仕事が忙しいのも事実なのだろう。
忙しい人間を掴まえて文句を垂れるのも大人げない気がして、指摘はしなかった。
「…フィーと、ずいぶん仲良くなったんだな」
なにを話すかと思えば、キアランはそんな事を口にした。