ラヴレス
走ってきたのが、フィーははあはあと肩で息をしている。
そんな彼女に、キアランは慌てたように立ち上がった。
その後ろ姿を見ながら、智純は妙に納得したような気分になる。
なにが、と問われても説明出来ないほど曖昧だが、先程感じた引っかかりが、思いの外すとんと軽くなったのだ。
「ダメじゃないか、フィー。無理をしてはまた熱が…」
そんな智純の思考など解る筈もないキアランは、今にも崩れ落ちそうなフィーを支える。
呼吸が繰り返される度に上下する細い肩に手を掛け、キアランは気遣わしげにフィーを見た。
しかしフィーは焦ったように顔を上げ、呼吸も荒くキアランに縋りつく。
しかしその顔には、歓びが滲んでいた。
「アランが…アラン叔父様が、目を覚まされたの!」